9位:『きみにしか聞こえない』(2007年)

子供の頃の出来事で自信をなくし、友達とも馴染めず孤独を感じていた女子高生のリョウと、事故で両親と弟をなくして祖母と暮らす青年シンヤ。
ある日、おもちゃの電話が突然繋がったことで知り合う。電話なしでも頭の中で話しかけると繋がることに気づき、度々話すようになる。互いに励まし、支え合っていたふたりは、実際に会おうということになる。
原作は乙一のライトノベル。乙一の本は、「純粋」と「狂気」の両極端なことで有名である。おもちゃの電話が繋がるというのは不思議で子供じみた話だが、原作自体がとても良くできているのである。演技力云々はさておき、成海璃子と小出恵介のふたりの爽やかなイメージが役柄に合っており、ふたりを素直に応援したくなる。
男女問わず、純粋で切ない話を好む方におすすめしたい。
8位:『パーマネント野ばら』(2010年)

西原理恵子の漫画作品を管野美穂主演で映画化。
主人公なおこは離婚し、田舎の漁村にある実家に身を寄せている。母が営む美容院「パーマネント野ばら」は地元の女たちのたまり場。あけっぴろげな女たちは毎日罵り合い、笑い合っていた。なおこは元小学校教師のカシマさんと密かに会いながらも、カシマさんのことが掴めずに戸惑い、孤独を感じていた。
本作は様々な面で振り幅が大きい。笑いどころが多すぎる。うっとりするような恋愛映画を求めて観れば、ポカンと口を開けてしまうであろう。西原理恵子の描く世界は、乱暴だが正直である。しかし、そのまま終わるかと思えば、違う展開が待っている。そして優しい。
強烈な個性の登場人物ばかりであるが、脇役として話題作に数々出演している小池栄子の演技と存在感に拍手を送りたい。
腹から笑ってぐっと泣ける恋愛映画を観たい人におすすめしたい作品。
7位:『ただ、君を愛してる』(2006年)

あるコンプレックスを抱えた誠人と少女のままのような静流は、大学で出会う。同じ匂いを感じ取ったふたりは友達になるが、静流は誠人のことを好きになる。女として見てもらえていないことが不満で、誕生日のプレゼントに「キスをしてほしい」と頼んだ。その日、静流は姿を消してしまう。
本作は映画『恋愛寫眞』のもうひとつの物語である。
極端な展開もなく、日常を中心に進むストーリー。さりげないふたりのやり取りが微笑ましい。だからこそ、消えた静流の真実を知っていくラストで胸が締め付けられる。
監督は静流役の宮崎あおいの演技センスに感服したという。同監督の代表作には届かないものの、ほんのり切ない物語である。